部長とのガチンコ、即ち雨宮との血戦へ。
アクアを逸らせるは、苦しくも苦しくも、再び彼女に襲い掛かる過去の夢か。

遂げられたと確信した刹那に、打ちのめされた、たった一言。呼ばれない、名前―――
かつて繋げられた薬指の感覚、いま繋げられた唇の感触。
どうして繰り返さなくてはいけないのか、どうして求めれば求めるほど、裏切られるのか、

夢惑い切羽詰まりゆくアクア、決して諦めない瞳はそのまま、けれど
目を逸らせば視界から消え去ってしまいそうなその背中、
だがしかし、ここで読み手にしっかりしろと言われるような僕らの陽一君ではございません、
何度も懲りずに言い続ける、「……違う」は、 もはや名言!(笑)

アクアの意志を尊重し、決意するは一蓮托生。だが流されるだけで終わる気も、毛頭無い。
ここまで来ると、問題するアクアと解決する陽一のサイクルが凄まじいことになってますが、
二人の予断を許さない動的な現在進行形っぷりは、読み手の掴んで離さない大きな要因ですなー。

そして永遠の「共」犯者達は、積年の因縁渦巻く戦場へ、
割れる注射器と共に流れ出す、偽りという真実、
嬉々として親指食い千切って血を渡すというアグレッシヴ過ぎる愛情表現を受け取り、
前へ進まんとする地球に、立ちふさがる銀河。

過去を振り切ろうとするもの、過去に手を伸ばそうとするもの、その両方の痛みを知るもの。
時を越えて繰り返される争い、また人は同じ過ちを―――否、日向陽一に同じ技は二度通用しない!

それが最も辛い役目でも、自身の痛み、加えて二人の痛みに挟まれようとも、
それでも立つ、その場所に、守るために。太陽は銀河と対峙する。

この後は―――まぁ、熱血青春まっしぐらモードというのは言うまでも無く、
男の自慢の拳で銀河を倒し(守り)、世界を救うと、大吾を越えると、銀河に轟き叫ぶ。
それは月の上でもなく、ロケットの中でもなく、宇宙ステーションの中でもなく、ただの学校の屋上で
それでもそれは確かに、その息子に、そして共に月を歩いたアクアに届く。

-- 寄り道 [その一歩は] --

予告からして驚天動地、一転する景色なAQUA編と比べて、当然舞台の規模は縮小しながらも、
話そのものは後退するどころか、際限なく広がり続けていて、
ミクロとマクロ、巨大な宇宙史と個人の人間ドラマ、
二つの視野視点の織り成す世界の魅力を創り出す上手さが実にお見事。
加えて、読み手の心臓殺し(笑)な、シナリオのアップテンポの妙も相まって、
物語のコントローリングには相当気を遣ってらっしゃったんじゃないかなーと、感服。
と、言うことも書いておかんと、ひたすら、
「アクアは陽一の嫁嫁」言ってる感想になりそうなので挟んで見た(笑)

-- かしこ --

踏み出した彼の一歩は 偉大なる奇跡を起こす。凍てついていたアクアの心の氷解を。
何度も何度もアクアと、求めて呼んで、呼んで求めて抱きしめる。「ありがとう」
二人なら、二人だからこそ、結ばれる。愛に満ち溢れすぎのHシーンへ。

髪を下ろし、涙を流し、ありのままで姿で、
何度も何度も、その名を呼んで、きゅっきゅきゅっきゅと、このバキュップルめが!
あの、反応で楽しむのは妙に嵌る(笑)、ワラエロっぷりも楽しめたってのは、
予想外もあって二重に得した気分でございました。
「明日が待ち遠しいなんて感覚」「生きてて良かった」
これまでの彼女の歩みに、一人の女の子に、恋する乙女に、
ここまで言わしめた陽一は凄いよ、ほんと凄いよ。
幸せに怯える彼女へのアフターケアも決意して、お姫様抱っこと、もう至れり尽くせりだな。

そんな幸せに、これほどなく読み手は微笑を零し、
―――その裏で、ああ、こりゃもう一雨来るなぁと思ってごめんなさい。
この辺まで来ちゃうとさ、散々叩き上げられてきたせいか、いい加減慣れれるんだよっ!(笑)
だがしかし、感動というものは気付いていても止められるものでは無いのであった。

陽一の前に現れる黒アリエ……もとい、あおい。引き金は、既に彼女の手の中に。
愛する女性と身を重ね、かつての想い人の夢を見る。
目覚める朝、嵐の前のラヴラブタイフーン。

手に入れた幸せに、甘受し溺れることを望むアクア、 対して陽一は相変わらずの心の中で「ちょっと待ったコール」。あえて気持ちを堰き止める。
この状況においてもなお、この流されなさっぷりはある意味、冷酷とも捉えられかねない
とも思うわけだけど、だからこそ、そこまで一途に(彼女の本懐に)考え続けられるからこそ、
紛れも無い、文句のつけようもない場所に、辿り着けるわけなのだろうね。
っていうか、こっちの陽一を褒める頻度も凄いことになって来てるね(笑)。

そして、それでも、アクアの求めの奔流に呑まれそうになる、その瞬間、
狙ったかのような素晴らしいタイミング(笑)で現れるアリエスに向けられる、邪魔の意志。
失うことを恐れるアクア、闇はすぐそこまで。
最大の相手が、秘めたる想いと真実と断罪を携えて、立ちはだかる。

謀ったような素晴らしいタイミングで消えるアリエス、残された便箋、そして真相は明かされる。
茜色に空は染まり、最後の闇の引き金が――、
再び謀ったような素晴らしいタイミング(しつこい(笑))で現れるアリエスによって―――放たれる。

返されるビンタ、堰を切ったようにその気持ちをぶつけ出すアリエス、溢れていた夢が、此処にも。
アクアを真っ向に弾劾する背中、正しくありのままに、アリエスの数少ない本音100%の告白。

一言一言の、あまりにもあまりにも強すぎる言葉が、切なくて痛すぎて。
容赦なく抉られるアクアだけではなく、もはやアリエス本人すらも刻む諸刃の刃。
それも偽りの無い、誰もが目を背け、アリエスだけが向かい合っていた真実。

それは陽一にも向けられる、彼の記憶の喪失の真相。
愛するが故に、その死から、目を逸らす。それはまるで……。

音も無く、淡々と告げられる事実によって、崩れ去らんとする積み重ねられた二人の想い。
砂上に消えさろうとする想い、されど残酷な天使は さらにそれすらも、夢散させようとする。
空っぽだから、得られないから、だからこそ、
一度でも得たものに対して、忘れられない想いの価値に、きっと本当は誰よりも拘る彼女だからなのか。

故に、極め付けの一言、
「絶対に…幸せにならないでください」

アリエスだからこその、と捉えても、
人が、同じく恋する想いを持つ人が言うにはあまりにも 胸が締め付けられて、はち切れそうになる台詞。
外に出すことすら叶わなかった想いを抱きしめ続けた少女が産み出してしまった、あまりに痛く優しい呪い。
同時に、人知れず夢に囚われていた傍観者の決意。

それでも、幸せになりたいとアクアは啼き焦がれ、
それでも、アリエスはその叫びの根すら、切り落とす。

アクアの零れ落ちる悲壮な慕情すら、砕いて見せるアリエスの意志。
陽一に向け、吐露される、ひたむきなひたむきな恋慕、友情、犠牲の心。
それはこの世界で最も秘めたる純粋の想いと同時に、
連綿と彼らの心を縛ってきた、「過去の夢」という名の壁そのもの。

それが今正にアリエスが懸ける存在の全てと共に、最大の選択肢となって立ちはだかる。


それでも、それでも、それでも―――否! だからこそ、日向陽一は譲れない。
アリエスの真っ直ぐな気持ちに、それ以上の真っ直ぐな気持ちで応えて語る。
決してアリエスの気持ちを否定するわけじゃなく、理解した上で、受け止めて、
そして、それでも前へ、さらに前へ進めんとする、「今」のままで「未来」への一歩の宣言。
それはアリエスが選ぼうとした道よりも、なお過酷な、不器用で不恰好で、どうしようもない生き方。
だが何処までも愛おしく、何処までも頼もしく、何処までも応援したい、素敵な背中。
ありのままにありのままの信念を。その思想は、アリエスの心さえも救っていく。

正しく感無量。だが、クライマックスはまだ先に。
空には一番星、そして今度こそ、彼は日向陽一はありのままに、ありのままのアクアと向かい合う。


背中合わせのランデヴー。 あのドア越しの二人の距離感がたまらなく好きだったり。
何処までも遠く、何処までも近い。
手を伸ばしても届かず、瞳の先に写ることもなかったとしても、その心を、すぐ近くに感じる。

二人の会話、もうそこには嘘も偽りも、ましてや遠慮など存在しない。真っ正直で飾らない、裸の感情。
一言一言が琴線にキュンキュン響き、喜びも怒りも哀しみ楽しみも、
どんな感情を持った台詞も、ここでは何もかもが心地よく心を揺さぶる。
っていうかああああああああ、もうこのとんでもなく無様で格好良過ぎる二人がたまらんなくてしょうがない。
言葉にならん、心底本当まぎれもなくもれなく、この場面大好きだわ。微笑み泣きまくり。
淡々とでも情感は際限なく溢れ続け、どんどんどんどん揺さぶりは大きくなる。

そして味噌汁トラップを退けつつ、最後の賭けの始まり、
止めときゃいいのに(笑)できっこない奇跡の駆け引き、だが起こせねば、はじまらない。
葵の写真、二人を縛り続けてきた過去の夢、ここでようやっと、陽一の救いへと昇華する。

過去と現在と未来と、共存する奇跡と、歩んだ全てが繋がるクロスロード。
さぁ、奇跡には奇跡で応えよう、これは二人で紡ぐ物語なのだから―――!
そして舞台は物語の始まりの場所、学校へ。

天候は雨、かつて捨てられた子猫が光を求めた天気の中を、さらに深へひた走る。
彼女の歩みが止まるなら迷わずいこう、お姫様だっこで。

ここで一気に駆け抜ける――のはちょっと待て、逃すものかよ名シーン!

「ね…ねぇ、陽一……あたしの名…」 「ん、どうしたアクア?」
「ん、どうしたアクア?」「……な、なんでもない…」「? 変な奴だ」

…A、AQUAルートラストから、彼女を一番苦しめてきた、最大の嘘からの解放の、シ、シーンがっ!?
お、おのれえ、け、決定的な場面をさらっとお茶漬けの如く流しおってからにぃ! 正に、ひまわり!
っていうか個人的にほんとに一瞬あっけに取られてましたよ(笑)、あまりにも正しすぎるであろうこのアッサリ感に。
自分の名前を正しくに呼んでくれだなんて、そんな不自然な問いはありえない。
ピンポイントラヴハンターは、いつものように、極自然にアクアと呼ぶ。
アクアにとって、最高のタイミングで、最速の速さで 最良の一言を爆撃する。

再び、プラネタリウムへ。集結する仲間達。
夢を紡いだ大吾の手袋で、陽一は命を懸けて、アクアの先へと女を運ぶ。
だがここに来てまでアクシデント。もー、本当に最後の最後まで、でもそんなところが大好きなんだよ、もー。
そしてだが、私を退けた相手がこんなところで立ち止まるのは許せないとばかりに、
立役者アリエス、いい女っぷりを見せてくれます。
かつて間に合わなかった事を、今度は間に合わせてみせる。彼女もまた、奇跡で応える!


「夢を見ることさえできれば、その夢に向かって歩いて行くことができる」
今度こそ、アクアの前に広がる夢(偽者)。陽一と共に広がる夢。いつかきっと、本物を掴み取るための、夢。

久しぶりの穏やかな時間に、水瓶座を元にした視点講座。「些細な出来事も見方次第では奇跡になる」
実は凄く単純なことだけど、これまでがむしゃらに歩んできた彼らにとっては、
とても重要なことで、そこで二人は、暗闇を点す星のような、そう、「希望」を見つけ出す。
もうね、さりげなく不安を根こそぎ取り除いていくのがね(笑)、しみじみするなぁ。

本日は快晴也、
抜けるような青空に向かって、アクアによって投げられる指輪。
あの日、地の底から返されたその想い出は、「……さよなら」と空の彼方へ返される。
この指輪投げといい、背中合わせといい、どれだけ私のハートをブレイクさせれば気が済むのか……!

もう一度感慨に耽って置こうとする陽一に対して、さっさと頑張れよなアクアに微笑みつつ、
ストロベリな太陽と地球の会話の後、ようやく出たよ、どこかおかしな目(陽一談)をした明君。
そうだね、ご両親(代わり)へのご挨拶はお約束だよな、

というわけで西園寺明、最後の最後で壁となって立ちはだかる…というよりも、完全に、日 向 陽 一 祭 へ(笑)。
愛する女の心から、おかしな目をした親父やら、全人類の未来まで、救ってみせます何処までも。
相変わらずの明の手際の良い敗戦処理にも哀愁が漂ってたまらない。だいごろうを抱く姿がカワイス。
そんな明に、さっきまでおかしな目とか言ってた相手に、お父さんとか言い出す陽一オソロシス。

そう、そんな親父はともかく、本当の最後の壁、アクアとアリエスとの溝。
「代償が必要な奇跡なんて、奇跡でもなんでもない!」
でも大丈夫。奇跡は既に起こされている。後は、走って呼び止めるだけ。

もう何の躊躇いもないアクアの大声。そして「…………ありがとう、アリエス!」、
イイねぇ、この作品は、ありがとうが言える作品は、イイねぇ。
手と手、お互いの頬を叩き合った、それくらい真っ直ぐ向き合ったその手が、硬く繋がれる。
これもまた彼女が求めて止めなかった、決して解けぬ絆、友愛。

嗚呼、本当に―――――ドサクサに紛れてアクアに向かって手を振る明カワイスなぁ。
じゃない、気分が良いなぁ。思えば随分と遠くへ来たもんだ。

エンディングへ、

恋人結びやウェンディングチョメチョメにお腹いっぱいになりつつ、
西園寺アクアや警備員けちらすアクアに割れんばかりに微笑みつつ、
きっちりアリエスのその後の変わらずさにそつのない安心を受け取りつつ、
かつて酒とグラスにまみれた(笑)、その両手。今青空の下、その両手には、
左手に愛しき陽一の手を、右手には自由を、そして全身には、溢れんばかりの陽の光。
最高の笑顔と共に「―――今、すっごく幸せ。信じられないくらい、幸せ」

それはやっぱり、とびっきり無敵のハッピーエンド。ビューティフルドリーマーズに祝福を。

ありがとう。